ドローンによる物件投下

ドローンにおける「物件吊り下げ」とは、ドローンに物を吊り下げて飛行させる行為を指します。ここでの「物件」は「物件投下」と同じく1kg未満の「物品」と考えて頂いて間違いありません。

物件の吊り下げは改正航空法では言及されていませんが、ドローン操縦士が遵守すべき「航空局標準マニュアル」では禁止されている行為となります。

〇物件の吊り下げ又は曳航は行わない。
(国土交通省航空局標準マニュアル)

弊社は飛行マニュアルの中で独自の安全対策を講じると共に、物件吊り下げの為の機構を開発し、全国の範囲で物件の吊り下げを行う許可を大阪航空局より得ました。

用途については本項で掲げる「海難救助活動」の他に「建設業界における高所作業の代行補助」も含まれています。 そのような経緯から、ドローンパイロットスクールでは「物件吊り下げ」の訓練を行うことが可能となっています(※全国包括申請を除く)。

物件投下の注意点

「物件投下」は改正航空法によって禁止されている行為で、文字通りドローンから物品を投下する行為です。これは物件投下後に機体のバランスが崩れて不安定となり易いことから、改正航空法によって禁止されました。

一方「物件吊り下げ」は縄などでドローンと物品を繋ぎ、縄と物品を吊り下げて飛行する行為となります。

物を吊り下げた状態での飛行は物品が風や慣性で横揺れすればする程に揺れが機体に伝わる他、プロペラに縄が巻き込んだり縄が木や構造物に引っ掛かったりするなどし、機体墜落のリスクが高い飛行となります。

そのため、許可を得るためには「何を」「どのように」吊り下げて飛行させるかを限定させると共に、独自に安全対策を講じ、飛行の方法論について地方航空局に報告を行い、許可を得る必要があります。

2017年12月25日、弊社はドローンによる物件の吊り下げ許可を「全国」の範囲で受けました

救助における物件吊り下げの利点

物件吊り下げは、今も山の救助活動の際に物資を届けるなどの目的で限定的に使用されています。物件投下ではなく何故物件吊り下げかというと、物件投下は物を上空から投下する行為であり、精度上の問題と共にそこに大きなリスクが伴うからです。

実際に2016年までは救助訓練で要救助者の近くに救援物質を届ける方法として、ドローンによる物件投下が行われていました。しかし、物件投下は落下地点範囲にリスクが生じることになります。

投下した物資が要救助者に当たれば、二次災害に発展しかねません。また、投下する物資がいなかる保護状態にあっても、落下の衝撃で中の救援物資が破損する可能性があります。緩衝材をつけても積載量や容積の問題が発生します。

そうした中、物件吊り下げでは機体の高度を物資が設置するまで下げることで、要救助者に安全に物資を運搬することが出来ます。その手法を採用することにより、投下リスクを軽減することが可能となります。

しかし、物件吊り下げは縄を吊り下げることからプロペラへの巻き込み等により、飛行のリスクが高くなることも事実です。投下のリスクと飛行のリスクをどのように考えるのかは、今後、救助活動でドローンを使用する際には重要な点となります。

海難救助での使用

山での救助活動では森や林の枝に縄が絡まるなどし、物件吊り下げの飛行リスクが高まります。しかし、海難救助では物件吊り下げのリスクは山に比べて低くなり、必要な物資を要救助者に届けることが可能です。

救助物資を投下する場合、海では山に比べて緊急性が高く、浮輪や救命胴衣といった容積がかさばる物が必要とされます。それらを物件投下しようとした場合、物件投下をするための機構も必然と大きくなり、運用が難しいと言った面がありました。

しかし、物件吊り下げは物件投下と異なり、物資を専用機構に収納する必要がありません。そのため、0.5kg近い救命胴衣を吊り下げて要救助者の元に迅速に運搬し、投下リスクなく届けることが出来ます。

また海難のみならず、土砂災害の現場などの水難事故といった緊急隊員が近づけない場所での活用も期待され、倒木やがれきに埋もれた状態で河川などで浮かんでいる人にも、物件吊り下げにより物資を届けることが可能です。

このようにドローンの物件吊り下げは物件投下では出来ない物資の輸送を行うことが可能であり、海難や水難事故の際に活躍することが期待されています。

物件吊り下げの訓練

物件吊り下げの訓練には多くの場合、物件を吊り下げるための機構開発を伴います。つまりは既存の機体を使用する場合は改造機扱いとなり、物件を吊り下げた状態でも安定した飛行が行えるか否かのチェックが必要となります。

また、機構の開発の有無を問わず「何を」「どのように」吊り下げるのかを申請先の地方航空局に報告する必要があり、訓練結果の確認を別途記載する必要があります。

ドローンパイロットスクールでは物件吊り下げの訓練が行える他、機構の開発にも助言を行うことが可能であり、訓練確認も実施します。全国包括での申請は困難が伴いますが、限定的な申請なら許可を得ることも可能です。

ドローンによる物件吊り下げを検討中の方は、お気軽にお問合せ下さい。

吊り下げの申請について

物件吊り下げの申請は「物件投下」と同等か、それ以上に難しい面があります。許可申請を行う際に通常の許可・承認の際に必要となる書類は、以下の通りです。

01:無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書
02:経路地図
03:無人航空機の製造者、名称、重量等
04:無人航空機の機能・性能に関する基準適合確認書
05:無人航空機の運用限界等
06:無人航空機の追加基準への適合性
07:無人航空機を飛行させる者の一覧
08:無人航空機を飛行させる者に関する飛行経歴・知識・能力確認書
09:無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性
10:飛行マニュアル(航空局標準マニュアル)

物件吊り下げを行う場合、「飛行マニュアル」に「航空局標準マニュアル」を使用することは出来ず(曳航と物件吊り下げが禁止されているため)、物件の吊り下げに関して独自の安全対策をまとめた自社製の飛行マニュアルを作成する必要があります。

また十種の書類の他にも、「何を」「どのように」吊り下げるのかについて報告する必要があり、独自の機構を開発した場合にはその設計図や写真が求められます。結果として、提出する書類は合計で40P以上にも及ぶ場合があります。

そのような物件吊り下げの許可申請に関しても、弊社は実績が御座います。許可申請サポートを通じ、お客様と各項目について理解を深めた上で許可申請を行います。

許可申請を行うことは単に書類を用意する行為ではなく、禁止されている飛行について理解を深め、安全対策の重要性を学ぶ行為です。

特に物件の吊り下げは物を吊り下げて飛行するという墜落のリスクが高い飛行となるため、安全対策について念入りに確認することが必要です。  物品の吊り下げは、物件投下と異なり、投下リスクが軽減できるなどの特徴があります。また、投下した際の二次災害が防ぐことが出来るなど、物件吊り下げによるリスクを回避することが出来ます。その他、投下リスクに対して墜落リスクを回避できるなどの点が特徴であり、海難救助以外の場面でも、水難救助などに使用することが出来ます。

立地条件・お客様に合わせた柔軟な対応

専用機構の開発補助から実地訓練、許可申請サポートと、物件吊り下げの許可のために必要なプログラムを全てサービスしているドローンパイロットスクールですが、立地はJR駅から徒歩五分の場所にあります。

機体の持ち込みにも対応しており、予め機体を弊社に発送頂くことも可能です。使い慣れた機種で、目的としている飛行の訓練を行うことが出来ます。

また、訓練スケジュールをご都合に合わせて組み立てることも可能です。物件吊り下げの訓練やご相談事が御座いましたら、お気軽にお問合せ下さい。

空撮後の業務を全面バックアップ

ドローンパイロットスクールは、お客様が許可・承認を得て終わりではありません

包括申請の場合は飛行実績の報告が必要となる他、定期的な訓練が求められます。(使用する機体について飛行を行おうとする日から遡り、90日までの間に1時間以上の飛行経験)

何よりドローンを用いた業務を行っていると、当初予想していなかった問題が発生したり、新しい用途を思いつくこともあります。

飛行実績の報告から定期的な訓練、業務で発生したドローンの問題や用途の検討などに対し、ドローンパイロットスクールは実務的・法律的にお力添えをすることが出来ます。

その他にも、ドローンを用いた空撮の画像処理から、額装、動画の編集や声優によるナレーションの追加まで幅広く対応しております。

ドローンパイロットスクールは卒業後もあなたの業務を飛躍的に高めることが可能です。お困りの際は、お気軽にお問合せ下さい。

料金に関して

物件吊り下げは、使用する機体や方法論によって難易度が大きく異なります。お客様の現状やご要望に応じてお見積りを作成させて頂きますので、お気軽にご連絡下さい。

尚、航空法の解説やドローンの飛行で必要となる知識を知って貰う他、お客様が気になっている事項にお応えすべく、弊社ではまず「ドローン法律セミナー」にご参加頂くことを勧めております。訓練の前にご検討下さい。